歴史と文化に触れる 私たちが萩市に滞在したのは、萩市が主な舞台となる大河ドラマの放送や、萩反射炉や松下村塾をはじめとする萩市の5資産を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録され、街全体が盛り上がっている時期でした。私たちも、空いた時間を見つけては市街地へ出かけました。 市内では、あちらこちらで城下町の風情を色濃く残す街並みを見ることができました。世界遺産にも登録された城下町では、白壁や土塀などから夏みかんがのぞく風景が印象的で、武家屋敷や維新の志士の旧宅、町家が今でも数多く残っています。江戸時代の地図を使って歩くことができるそうで、良い意味で現代っぽくない、まさにタイムスリップをしたような感覚を味わうことができました。 また、松下村塾のある松陰神社では、日本の近代化・工業化をリードした多くの人材を輩出した場所を間近で見ることができました。地元の方たちが、吉田松陰を敬意と親しみを持って「松陰先生」と呼び、幕末維新の歴史についても教えていただいていたこともあり、まさに、この地から日本の歴史が変わったのだと思うと、とても神聖な場所のように感じ、地元の方たちの郷土愛の強さもより実感することができました。 一方、藩の経済を支えていた港町・浜崎地区では、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された伝統的な家屋が立ち並びます。その街並みの中にあり、古民家再生のモデル住宅である梅屋七兵衛旧宅は、外観は当時の伝統的な姿を保ちながらも、内部のキッチンや浴室、トイレなどは現代的な設備となっており、萩に多く現存するという古民家の活用方法の一つを示す建物を見ることができました。 そして、藍場川では、城下町の生活の様子も見ることができました。屋敷内に川の水を引き入れて池泉庭園を造り、さらには生活用水としても利用していたという武家屋敷をはじめ、川沿いにはハトバと呼ばれる洗い場も見られ、自然と共存する萩の人の生活の知恵を垣間見ることができました。 古い街並みの中に、それぞれに特徴ある史跡が数多く点在しており、それぞれが味わい深く、そこに暮らしてきた人たちの息吹が感じられ、その一つひとつに魅力を感じる街でした。16
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